Arch Linux インストール (6)

GUI 環境の構築
GUI 環境には色々な選択肢があるため、ここでは一例として、X11 の環境をインストールする場合を説明します。
GUI 環境について
Windows などでは、OS 自体に GUI の機能が付属しているため、GUI 環境を構築するといった手順は必要ありませんが、Linux では、OS 自体に GUI の機能はないため、各開発者によって作られたパーツを組み合わせて、GUI を構築していく必要があります。

GUI に関するパーツは基本的に、それぞれが一つのパッケージとして、細かく別れていますが、複数のパーツを一つにまとめて、「統合デスクトップ環境」として構築されたものがいくつか存在します。
GNOME、KDE、MATE、Xfce、LXDE、LXQt などが、それに当たります。

GUI 環境の構築で一番楽なのは、これらの統合デスクトップ環境をインストールすることです。

自分で好きなようにカスタマイズしたい場合は、好きなパーツを選んで構築することも出来ますが、それぞれ手動でインストール&設定を行う必要があるため、少し手間がかかります。
フォント
# フォント - ArchWiki

GUI 環境で日本語を表示するためには、日本語のフォントが必須となるので、まずは、GUI 環境で使うデフォルトのフォントをインストールしておいてください。

公式リポジトリには以下のパッケージがあるので、いずれかをインストールしておいた方がいいでしょう。

IPA フォントotf-ipafont
Adobe Source Han フォントadobe-source-han-sans-jp-fonts (ゴシック体)
adobe-source-han-serif-jp-fonts (明朝体)
Noto CJKnoto-fonts-cjk

他には、端末用の欧文フォントとして、「DejaVu Sans Mono」 (ttf-dejavu) がおすすめです。
フォントを手動でインストール
自分でダウンロードしたフォントを手動でインストールする場合は、フォントファイルを、以下のいずれかのディレクトリに置いてください。

~/.local/share/fonts
/usr/share/fonts

これらのディレクトリにファイルを置くだけで、有効になります。

~/.fonts は現在、非推奨になっています。
おすすめフォント
ブラウザ用には、「Rounded Mgen+」 「MiguMix 1P」。
テキストエディタ用には、「Migu 1M
プログラミング用には、「Ricty
がおすすめです。
ディスプレイサーバーのインストール
「ディスプレイサーバー」は、GUI を使う上で一番基本となるもので、ウィンドウを表示するための機能を提供します。

# Xorg - ArchWiki
# Wayland - ArchWiki

現在では、基本的に X11 (Xorg) が使われますが、新しく Wayland が開発されており、いずれはそちらに置き換わっていくことになると思います。
ただし、Wayland はまだ不便なことも多いので、ここでは X11 をインストールします。

# pacman -S xorg-server

他に、環境によっては、ビデオドライバなどが必要になります。
詳しくは、以下のページか、Wiki の方を確認してください。

>> X11 のインストール
VirtualBox 環境
# VirtualBox/Arch Linux をゲストにする - ArchWiki

VirtualBox 上で Arch Linux をインストールしている場合、ビデオドライバのインストールは必要ありません。
代わりに、virtualbox-guest-utils パッケージをインストールしてください。
VirtualBox の Guest Additions を使わずに、必要なユーティリティなどをインストールできます。

なお、インストール時にモジュールパッケージの選択が求められますが、VirtualBox 内で通常の linux カーネルをインストールした場合は virtualbox-guest-modules-arch、他のカーネルを使う場合は virtualbox-guest-dkms を選択してください。
Xorg キーボード設定
# Xorg でのキーボード設定 - ArchWiki

GUI 環境上では、別途キーボードの配列設定が必要になります。

統合デスクトップ環境では、設定画面で設定できる場合もありますが、手動で設定したい場合は、以下のように、日本語キーボードの設定をしてください。

"/etc/X11/xorg.conf.d/10-keyboard.conf" ファイルを作成して、以下の内容を記述してください。

Section "InputClass"
  Identifier      "Keyboard Defaults"
  MatchIsKeyboard "on"
  Option          "XkbLayout" "jp"
  Option          "XkbModel"  "pc104"
EndSection
統合デスクトップ環境
統合デスクトップ環境を使うと、ある程度簡単に GUI 環境を構築できます。
最初はこれらを使って構築したほうが良いでしょう。

ただし、統合デスクトップ環境のパッケージをインストールしただけでは、デスクトップを起動できません。
最低限、ディスプレイマネージャを PC 起動時に有効にするという作業が必要です。
また、設定ファイルで設定を行わなければならない場合もあります。
デスクトップの選択
# デスクトップ環境 - ArchWiki

上記の中から、好きなものを選んで、各ページで詳細を確認してください。
シンプル・軽量さを求めたい場合は、XfceLXDELXQt がおすすめです。

"gnome" や "lxqt" などのパッケージグループでは、統合デスクトップ環境で推奨される複数のパッケージがまとめられているため、基本的には、それらのパッケージグループをインストールしてください。

ただし、自分で必要なものだけ細かく選択して、それぞれのパッケージをインストールすることもできますし、基本パッケージ以外にも、任意でインストールが必要なパッケージもあります。
ディスプレイマネージャ
# ディスプレイマネージャ - ArchWiki

デスクトップを起動させるためには、ユーザーのログインと、デスクトップの選択を行う、「ディスプレイマネージャ」が必要になります。

「ディスプレイマネージャ」は、Linux の起動後に表示される、GUI のログイン画面を提供するためのものです。
これが存在して、かつ systemd で起動時に有効になっていないと、コンソール画面のままになります。

ディスプレイマネージャは、起動するデスクトップを選択する機能もあるため、使用するデスクトップとは関係なく、好きなものを使えます。
ただし、各デスクトップでは、推奨されているディスプレイマネージャがあるので、基本的にはそれを使ってください。

デスクトップのパッケージグループ内に、ディスプレイマネージャが含まれている場合もありますが、含まれていない場合もあります。
その場合は、自分でディスプレイマネージャを選択して、インストールしてください。
(Wayland のデスクトップを使う場合は、Wayland に対応したディスプレイマネージャが必要になります)

SDDM は、Wayland にも対応しており、シンプルです。

インストール後は、必要であれば、ディスプレイマネージャの設定ファイルを編集してください。

ディスプレイマネージャを有効にする
ディスプレイマネージャは、インストールしただけでは、実行されません。
PC 起動時に実行させるために、systemd のサービスを有効にする必要があります。

## サービスを有効にする
# systemctl enable <name>

有効にするサービス名がわからない場合は、ディスプレイマネージャのパッケージに含まれる、サービスファイル名 (*.service) を確認してください。

$ pacman -Ql <package> | grep .service

上記のコマンドは、すでにインストールされている、指定パッケージ <package> に含まれるファイルの一覧を出力し、その中から、".service" が含まれる行を探して、表示します。

例えば、LXDM (lxdm パッケージ) なら、/usr/lib/systemd/system/lxdm.service が存在します。
lxdm.service もしくは、拡張子を除いた lxdm を指定して、サービスを有効にします。
(例) LXQt の場合
ここでは例として、LXQt のデスクトップをインストールする手順を説明します。

まず、パッケージのインストールです。
lxqt パッケージグループ内にはディスプレイマネージャは含まれていませんが、SDDM が推奨されているため、そちらを使います。

# pacman -S lxqt sddm

次に、SDDM を有効にします。

# systemctl enable sddm

あとは、再起動すれば、SDDM のディスプレイマネージャが起動して、ログインした後、LXQt が起動します。
(インストールの途中なので、ここではまだ再起動しないでください)
日本語IM
# 国際化 - ArchWiki
# Fcitx5 - ArchWiki

日本語で入力する場合は、別途「入力メソッド」が必要になります。
現状では、fcitx5 + mozc の組み合わせを使うのが、一般的です。

GNOME の場合は、ibus, ibus-anthy を使ってください。
fcitx5 + mozc
fcitx は現在、ver 5 (fcitx5) が最新版です。

## fcitx5 のインストール
# pacman -S fcitx5-im fcitx5-mozc

(インストール途中で指定する追加のパッケージは、
 Enter キーで入力を省略して、すべてインストールしてください)

環境変数
入力メソッドを使うためには、環境変数を設定する必要があります。

Linux 全体として設定するなら /etc/environment ファイルに、X11 でユーザー別に設定するなら ~/.xprofile ファイルに設定してください。

/etc/environment の場合
GTK_IM_MODULE=fcitx
QT_IM_MODULE=fcitx
XMODIFIERS=@im=fcitx

~/.xprofile の場合
export GTK_IM_MODULE=fcitx
export QT_IM_MODULE=fcitx
export XMODIFIERS=@im=fcitx

※ ~/.xprofile を編集する場合は、一般ユーザーでログインした状態で行ってください。

起動させる
使用するためには、ログイン後に、自動的に fcitx5 のコマンドを起動させる必要があります。

デスクトップ環境によっては、/etc/xdg/autostart/*.desktop のファイルが使用されて、何も設定しなくても、自動的に起動する場合があります。

自動で起動しない場合は、~/.xinitrc に「fcitx5 &」を記述して X11 起動後に実行させるか、各ウィンドウマネージャが起動した時に処理されるファイルを使って実行させるかしてください。

Openbox の場合は、~/.config/openbox/autostart ファイル内に「fcitx5 &」の行を記述すると、Openbox の起動直後に実行できます。
オーディオ
Linux カーネルには ALSA が含まれているため、普通に音を出すだけなら、何もインストールしなくても大丈夫です。

ただし、FireFox などの一部のアプリでは、音声を出力するのに PulseAudio が必須となる場合があります。

オーディオに関しては、いくつか選択肢があるので、用途に合わせて、必要なものをインストールしてください。
オーディオの選択肢
ALSALinux カーネルに含まれている。
アプリごとの音量調節はできない。
細かい設定を行おうと思うと、設定ファイルを編集する必要があるため、難しい。
PulseAudio複数のストリームを同時再生したり、アプリごとに音量を変更できたりと、柔軟性に優れている。
機能自体は絞られているが、一般用途であれば使いやすい。

パッケージ: pulseaudio
JACKリアルタイムオーディオ向け。
実際に音が鳴るまでの遅延を、出来るだけ少なくしている。
PulseAudio との併用には問題点がある。

パッケージ: jack2
PipeWire一番新しく開発されたもの。
JACK のリアルタイム性を持ちつつ、ALSA, PulseAudio, JACK と互換性があるため、これ一つあればオーディオを総括できる。
デフォルトで採用しているディストリビューションもある。

パッケージ:
pipewire
pipewire-alsa
pipewire-pulse
(インストールすると、pulseaudio は削除される)
pipewire-jack

※ALSA, PulseAudio, JACK を使用しているアプリを、PipeWire で対応させたい場合は、各パッケージをインストールします。
(pipewire-pulse がインストールされている場合、PulseAudio に向けて出力されたものは、PipeWire を使って再生される)

現状では、PulseAudio か PipeWire を使うといいでしょう。
音量調節
ALSA の音量調節は、alsa-utils パッケージ内の alsamixer コマンド (CUI) を使います。

PulseAudio の音量調節は、pavucontrol (GTK+) または pavucontrol-qt (Qt) を使います。

PipeWire の場合は、wireplumber の wpctl コマンドを使うと、音量の変更などが行えますが、pipewire-pulse もインストールしている場合は、PulseAudio 用の pavucontrol を使って調整することもできます。

※オーディオは、初期状態でミュート (無音) になっているため、音量調節アプリなどを使って、解除する必要があります。
PulseAudio 音量調節 (pavucontrol)
一般的な音量調節を GUI で行いたい場合は、pavucontrol を使うといいでしょう (ALSA しか使わない場合などを除く)。

ただし、設定項目が複雑なので、少々わかりにくいです。

「設定」タブの「プロファイル」で、出力と入力の組み合わせを変更できます。
「出力デバイス」タブでは、出力する端子の選択や、音量・ミュートなどを変更できます。

プロファイル
アナログの出力/入力端子を使うなら、「アナログステレオデュプレックス」を選択します。
「アナログステレオ出力」の場合、入力端子は無効になるので、録音ができません。

HDMI に出力したい場合は、「デジタルステレオ (HDMI) 出力」を選択します。
この場合、アナログの出力端子には出力されません。
アナログの録音も行いたいなら、「+ アナログステレオ入力」が付く項目を選択します。

出力デバイス
「ポート」で、音を出力したい端子を選択してください。
複数の端子が接続されている場合は、ここで出力先を変更しておかないと、音が鳴りません。

「Line Out (ライン出力)」は、PC 背面のラインアウト。
「Headphones (アナログヘッドホン)」は、ヘッドホン出力です。

ミュートのアイコンをクリックすると、ミュートのセット/解除ができます。
ほか
ブラウザなど、他に必要なものがあれば、インストールしてください。
FireFox の場合は、firefox と、日本語用に firefox-i18n-ja が必要です。

ただし、この段階で、最低限の GUI 環境は揃っているため、再起動後に行っても構いません。
端末
※ GUI 上でコンソール画面を表示するために、ターミナルエミュレータのアプリは、最低でも1つはインストールしておいてください。

統合デスクトップ環境であれば、各デスクトップ用の端末エミュレータがパッケージに含まれていると思いますが、それ以外の場合は、xtermlxterminal などをインストールしておいてください。

GUI の端末がない場合でも、Alt+Ctrl+F* (ファンクションキー) で仮想コンソールを起動すれば、コンソール画面は実行できます。

ファンクションキーは、F2, F3 などを順に押してみて、端末のログイン画面が表示されたものを使ってください。
元の画面に戻るには、Alt+Ctrl+F1 などを押してみます。
再起動
GUI 環境の構築が終わったら、ロケールを日本語に設定して、再起動します。

## 一般ユーザーの場合、root に戻る
$ su -

## ロケールを日本語に設定
# echo LANG=ja_JP.UTF-8 > /etc/locale.conf

## 再起動
# systemctl reboot

後は、GUI 環境で、必要な作業を行ってください。
これで基本的なインストール作業は終わりです。

>> インストール (7) - 各設定
>> 定期的に行うこと